マニュアル作成の4要素と実践ステップ

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マニュアル作成の4要素と実践ステップ

目次

〜「見よう見まね」から「誰でもできる」への変革術〜

「新人に教えるとき、いつも『見て覚えて』と言ってしまうんです…」 「ベテランが休むと、その日は大混乱になってしまって…」

そんな悩みを持つ経営者の皆さん、実は「マニュアル」が解決の鍵なんです。でも、「マニュアル作成って難しそう…」と思っていませんか?

実は、たった4つの要素を押さえるだけで、誰でも実践的なマニュアルが作れるんです!

なぜマニュアルが必要なのか?

【実話】ある居酒屋の大混乱

大阪の居酒屋「まんぷく亭」(仮名)では、ベテランの田中さんが唐揚げ作りを一手に担っていました。田中さんの唐揚げは「外はカリッ、中はジューシー」でお客様からの評判も上々。

ところが、田中さんがインフルエンザで1週間休むことに…

代理で作った新人の佐藤さんの唐揚げは…

  • 油の温度が分からず、生焼けになったり焦げたり
  • 下味の時間も適当で、味にバラつき
  • 1回目は硬く、2回目はベチャベチャ

お客様からは「いつもと違う」「美味しくない」とクレームの嵐。

田中さんに電話で聞いても: 「えーっと、油は適当に熱くして…下味は感覚で…揚げ時間は様子を見ながら…」

結果:その週の売上は30%ダウン。常連客の中には来なくなった人も…

店長の後悔: 「田中さんの技術が『見えない財産』だったことに、初めて気づきました。これをちゃんと形にしておけば…」

マニュアル作成の4つの要素

要素1:【依存解消】特定の人に頼らない仕組み

目的:「この人じゃないとできない」を「誰でもできる」に変える

具体例

  • ❌ 「田中さんの感覚で味付け」
  • ⭕ 「醤油大さじ2、みりん大さじ1、にんにく1片」

ポイント

  • 「感覚」「適当」「いい感じ」を数字に置き換える
  • 「経験者なら分かる」表現を避ける
  • 写真や図を使って視覚化する

要素2:【標準化】誰がやっても同じ結果

目的:品質のバラつきをなくし、安定したサービスを提供

具体例:美容室のシャンプー手順

  • ❌ 「適度にマッサージしながら」
  • ⭕ 「指の腹で円を描くように、1箇所につき3回ずつマッサージ」

標準化のコツ

  • 時間を明確にする(「3分間」「5回」など)
  • 力加減を具体化する(「軽く」→「卵を握る程度の力で」)
  • 判断基準を明確にする(「十分に」→「泡が白くなるまで」)

要素3:【共有化】みんなが見られる・使える

目的:作ったマニュアルが確実に活用される環境を作る

共有方法の例

  • 紙のマニュアル:ラミネート加工して各持ち場に配置
  • デジタル版:スマホで見られるクラウド共有
  • 動画マニュアル:YouTubeの限定公開を活用
  • 写真付き手順書:冷蔵庫や作業台に貼り付け

実例:ある寿司屋では、シャリの握り方を動画で撮影し、休憩室のタブレットでいつでも見られるようにしました。新人は何度も見返すことで、短期間で技術を習得できるようになりました。

要素4:【実行徹底】そのやり方で必ず実施

目的:マニュアルを「飾り」ではなく「実用品」にする

実行徹底のための仕組み

  • チェックリスト化:各工程にチェック欄を設ける
  • 定期確認:週1回、マニュアル通りできているかチェック
  • 改善提案制度:使いにくい部分の改善案を募集
  • 成功事例の共有:マニュアル活用で成果が出た例を発表

実践ステップ:5段階でマニュアル完成

ステップ1:「作業の見える化」(30分)

まず、実際の作業を観察して記録します。

やり方

  1. ベテランスタッフに普段通り作業してもらう
  2. 横で一つ一つの動作を書き留める
  3. 所要時間も測定する
  4. 「なぜその順番でやるのか」理由も聞く

記録例:唐揚げ作り

1. 鶏肉を一口大にカット(約2cm角)- 5分
2. ボウルに醤油大さじ2、酒大さじ1を入れる - 1分
3. 鶏肉を調味料に漬け込む - 30秒
4. 15分間冷蔵庫で寝かせる - 15分
5. 片栗粉をまぶす(全体が白くなるまで)- 2分
...

ステップ2:「分解と整理」(20分)

記録した内容を整理し、重要なポイントを明確にします。

整理のコツ

  • 準備→実行→仕上げの3段階に分ける
  • 失敗しやすいポイントを赤字で記載
  • 品質に影響する重要な工程に★マークを付ける

ステップ3:「写真・図の追加」(40分)

文字だけでは分からない部分を視覚化します。

撮影ポイント

  • 材料の分量(計量スプーンで実際に測った状態)
  • 作業中の手の動き(斜め上から撮影)
  • 完成状態(理想的な仕上がり)
  • NGパターン(失敗例も載せる)

実例:ある洋食屋では、オムライスの卵の巻き方を6枚の連続写真で説明。「フライパンを傾ける角度」「菜箸の使い方」まで分かるように撮影しました。

ステップ4:「テスト運用」(1週間)

実際に新人や他のスタッフに使ってもらい、問題点を洗い出します。

テスト時のチェックポイント

  • マニュアル通りにできるか?
  • 分からない部分はないか?
  • 時間通りに完成するか?
  • 品質は基準を満たすか?

改善例

  • 「適量」→「ティースプーン1杯」に変更
  • 「よく混ぜる」→「時計回りに20回混ぜる」に具体化
  • 写真を追加:「この状態になったらOK」

ステップ5:「完成版作成と運用開始」(30分)

テスト結果を反映した最終版を作成し、本格運用を開始します。

完成版のポイント

  • 表紙:何のマニュアルか一目で分かるタイトル
  • 目的:このマニュアルで何ができるようになるか
  • 注意事項:安全面や衛生面の重要ポイント
  • 更新日:いつ作成/更新されたかを明記

【成功事例】ラーメン店の劇的改善

東京のラーメン店「麺屋TAKUMI」(仮名)では、マニュアル導入前後で以下の変化がありました。

Before:職人頼みの経営

  • 店主以外はスープが作れない
  • 新人の教育に3ヶ月かかる
  • 店主が休むと売上50%ダウン
  • 味にバラつきがあり、クレームも発生

After:マニュアル導入後

  • 4つの要素でスープ作りを完全マニュアル化
  • 新人でも1週間でスープが作れるように
  • 店主不在でも品質維持
  • 味が安定し、リピート客が増加

具体的な改善内容

  1. レシピの数値化:「たっぷり」→「500ml」
  2. 温度管理の明確化:「熱く」→「85-90度」
  3. 時間の厳格化:「しばらく」→「15分間」
  4. 写真による品質基準:理想的なスープの色と泡立ち具合を撮影

店主のコメント: 「最初は『職人の技は教えられない』と思っていました。でも、マニュアル化することで、自分も『なぜそうするのか』を深く考えるようになり、逆に技術が向上しました。今では安心してお店を任せられます」

よくある失敗と対策

失敗1:「完璧を求めすぎる」

❌ 最初から100点のマニュアルを作ろうとする ⭕ 60点でもまず作って、使いながら改善していく

失敗2:「作って満足」

❌ マニュアルを作ったら終わりだと思う ⭕ 定期的に見直し、アップデートを続ける

失敗3:「専門用語の多用」

❌ 業界用語や難しい表現を使う ⭕ 中学生でも分かる簡単な言葉で書く

失敗4:「写真が少ない」

❌ 文字だけで説明しようとする ⭕ 「百聞は一見にしかず」で写真を多用する

今日からできる「マニュアル化」第一歩

今日(10分):対象業務を決める

  • 一番属人化している作業を1つ選ぶ
  • 「この人が休んだら困る」作業を特定する

明日(30分):観察と記録

  • 実際の作業を見ながらメモを取る
  • 時間を測定する

今週中(1時間):初版作成

  • 4つの要素を意識して初版を作成
  • 写真を3枚以上撮影

来週(実践):テスト運用開始

  • 他のスタッフに使ってもらう
  • 問題点を記録して改善

まとめ:マニュアルは「愛情」の形

マニュアル作成は、一見面倒な作業に思えるかもしれません。しかし、実はスタッフへの愛情の表れなんです。

  • 新人が安心して働けるように
  • ベテランが休んでも困らないように
  • お客様に安定したサービスを提供できるように
  • みんなが成長できるように

4つの要素を意識して、まずは小さな一歩から始めてみてください。きっと、あなたのお店が「誰でも活躍できる場所」に変わっていくはずです。

次回は「作業分解ワークショップの進め方」について、実際の進行手順を詳しく解説します。

「チーム全体でマニュアル作りに取り組みたい」という方は、ぜひお楽しみに!


今すぐできるアクション 今日、帰宅前に「一番マニュアル化したい作業」を1つ決めて、明日から観察を始めてみてください。小さな一歩が大きな変化の始まりです!

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この記事を書いた人

コピーライター/店舗利益最大化コンサルタント
中小企業診断士(経済産業省登録番号 402345)
絵本作家(構想・シナリオ担当)

・有限会社繁盛店研究所 取締役
・株式会社繁盛店研究出版 代表取締役
・株式会社日本中央投資会 代表取締役
・繁盛店グループ総代表

1975年 静岡県清水市生まれ(現在:静岡市清水区)
自営業の家に生まれ、親戚一同も会社経営をしていることから、小さい頃より受付台にたち、商売を学ぶ。

大学入学と同時にお笑い芸人としての活動を経験。活動中は、九州松早グループの運営するファミリーマートのCMに出演。急性膵炎による父の急死により大学卒業後、清水市役所に奉職。

市役所在職中に中小企業診断士の取得を始める。昼間は市役所で働き、夜は診断士の受験勉強。そして、週末は現場経験を積むため無給でイタリアンレストランでの現場修行を経験。6年間の試験勉強を経て、中小企業診断士資格を取得。

取得を契機に7年目で市役所退職。退職後、有限会社繁盛店研究所(旧:有限会社マーケット・クリエーション)を設立。

お笑い芸人として活動していた経験から、小売店や飲食店、美容室、整体院の客数増加や店内販売活動に、お笑い芸人の思考法や行動スタイル、漫才の手法などを取り入れることで、クライアントの業績が着実に向上していく。

こうした実績を積み上がるに従い、信奉者が増える。独自の繁盛店メソッド「笑人の繁盛術」の考え方で、コンサルティングを行う。

発行するメールマガジンは、専門用語を使わない分かりやすい内容から、メルマガ読者からの業績アップ報告が多く、読者総数は1万人を超える。

会員制コンサルティングサポート「増益繁盛クラブ」を運営。人気テレビ番組ガイアの夜明けにも取り上げられるなど注目を浴びる。これまで北は北海道から南は沖縄、そして、アメリカからも参加する方がいるなど、多くの方が実践を続けている。

コンサルタントが購読する「企業診断」(同友館)からもコンサルタントに向けた連載を依頼されるなど、コンサルタントのコンサルタントとしても活躍中。

どんなに仕事が忙しくとも毎月1回の先祖のお墓参りを大事にしている。家族を愛するマーケッター。

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