なくす・任せる・委託する・変える・速める・集約する全技法
はじめに:時間創出には6つの選択肢しかない
「時間がない」と悩んでいる経営者に「どうすれば時間を作れますか?」と質問すると、多くの方が「うーん…」と困ってしまいます。
実は、どんな作業も時間創出のためには6つの選択肢しかありません。この6つを体系的に理解し、使いこなせるようになれば、あなたは「時間創出のプロフェッショナル」になれます。
今日は、この6つの技法を具体例とともに詳しく解説し、あなたの24時間を劇的に有効活用する方法をお伝えします。
6つの時間創出技法の全体像
技法一覧
- なくす:その作業をやめる・廃止する
- 任せる:スタッフに移譲する
- 委託する:外部の専門家に依頼する
- 変える:より効率的な方法に変更する
- 速める:同じ方法でスピードアップする
- 集約する:バラバラの作業をまとめて実行する
優先順位の原則
この6つには明確な優先順位があります。
優先順位:なくす > 任せる > 委託する > 変える > 速める > 集約する
なぜなら、「なくす」は100%の時間削減効果がありますが、「速める」は20〜30%程度の効果しかないからです。
技法1:【なくす】- 最強の時間創出法
基本的な考え方
「なくす」は最も効果的な時間創出法です。その作業を完全に廃止するので、100%の時間削減効果があります。
「なくす」対象の見つけ方
以下の質問で「なくす」べき作業を特定します。
チェックリスト:
- この作業をやめても、売上・利益に影響しないか?
- この作業は「なんとなく続けている」だけではないか?
- この作業は「業界の常識」だからやっているだけではないか?
- この作業に費やす時間と得られる成果が見合っているか?
実践事例
事例1:美容室の年賀状廃止
- 削減時間:年間40時間(作成20時間 + 宛名書き20時間)
- 影響:特になし(お客様から苦情もゼロ)
- 代替策:SNSでの新年挨拶に変更
事例2:居酒屋のワンコインランチ廃止
- 削減時間:週15時間(仕込み + 提供時間)
- 影響:ランチ売上は減ったが、時間対利益率で大幅改善
- 効果:創出時間でディナー新メニュー開発に集中
事例3:カフェの手書きメニューボード廃止
- 削減時間:週3時間
- 代替策:印刷メニューに変更
- 効果:字が綺麗で読みやすくなり、顧客満足度向上
「なくす」決断のコツ
多くの経営者が「なくす」決断を躊躇する理由と対策:
躊躇する理由1:「お客様に迷惑をかけるかも」 対策:3ヶ月間試験的に廃止し、反応を見る
躊躇する理由2:「他店もやっているから」 対策:他店の真似ではなく、自店の方針で決める
躊躇する理由3:「今まで頑張って作ってきたから」 対策:埋没コストと割り切る
技法2:【任せる】- スタッフの成長と時間創出の一石二鳥
「任せる」の基本原則
スタッフに任せることで、あなたの時間を創出すると同時に、スタッフの成長も促進できます。
任せるべき作業の判断基準
任せるべき作業:
- 定型的・ルーティン作業
- マニュアル化可能な作業
- 失敗してもリスクが小さい作業
- スタッフのスキルアップにつながる作業
任せるべきでない作業:
- 経営判断が必要な作業
- 高度な専門技術が必要な作業
- 失敗すると大きな損失が生じる作業
段階的な任せ方
ステップ1:作業の分解とマニュアル化
例:レジ締め作業の分解
- レジ内の現金を数える
- レシートジャーナルを印刷する
- 売上データをエクセルに入力する
- 現金とデータの照合をする
- 金庫に現金を保管する
ステップ2:部分的な移譲
全てを一度に任せるのではなく、段階的に移譲します。
第1段階:現金を数える作業のみ移譲 第2段階:データ入力作業も移譲 第3段階:照合作業も移譲 最終段階:全工程を移譲
ステップ3:チェック体制の構築
任せた後も、定期的にチェックする仕組みを作ります。
実践事例
事例1:そば店の出汁取り作業
- 従来:店主が毎朝1時間で実施
- 分解後:8つの工程に分解し、パートスタッフに移譲
- 結果:店主の朝の時間1時間を創出、新メニュー開発に活用
事例2:美容室の予約管理
- 従来:オーナーが電話・ネット予約を全て管理
- 移譲後:受付スタッフが基本的な予約管理を担当
- 結果:週5時間創出、技術向上の練習時間に活用
技法3:【委託する】- 専門家の力を借りる
委託すべき業務の判断基準
委託を検討すべき業務:
- 専門知識が必要で、習得に時間がかかる
- 頻度は高くないが、やらないといけない
- 外部の方が明らかに品質・効率が高い
- 自分でやるより委託費用の方が安い
主な委託対象業務
税務・会計関係
- 税理士への委託:確定申告、税務相談
- 時間創出効果:年間20〜40時間
- 費用対効果:税務リスク軽減も含めて高い
デザイン関係
- デザイナーへの委託:チラシ、メニュー、ホームページ
- 時間創出効果:案件あたり5〜20時間
- 費用対効果:プロ品質で集客効果向上
清掃関係
- 清掃業者への委託:厨房清掃、エアコン清掃
- 時間創出効果:月間4〜8時間
- 費用対効果:深夜・早朝作業から解放
委託成功のポイント
ポイント1:明確な指示書の作成
委託する際は、以下を明確に伝えます:
- 作業の目的と背景
- 具体的な成果物のイメージ
- 品質基準
- 納期
ポイント2:段階的な委託
最初は小さな案件から始めて、相互の信頼関係を構築します。
ポイント3:定期的なコミュニケーション
放置せず、進捗確認と品質チェックを行います。
技法4:【変える】- より効率的な方法への転換
「変える」の着眼点
同じ目的を達成するための、より効率的な方法を見つけます。
主な変更パターン
パターン1:手作業→ツール活用
例:手書き→PC作成
- 手書きのチラシ作成:3時間
- Wordでのチラシ作成:1時間
- 時間削減:2時間(67%削減)
パターン2:個別対応→一括処理
例:個別メール→一斉配信
- お客様への個別メール:20分×50人=16.7時間
- メール配信システム:2時間
- 時間削減:14.7時間(88%削減)
パターン3:移動→リモート
例:銀行窓口→ネットバンキング
- 銀行への移動+手続き:1時間
- ネットバンキング:10分
- 時間削減:50分(83%削減)
実践事例
事例1:レストランの注文受付
- 変更前:電話注文のみ
- 変更後:ネット注文システム導入
- 効果:注文受付時間50%削減、注文ミス90%削減
事例2:美容室の顧客管理
- 変更前:紙のカルテ管理
- 変更後:タブレットでデジタル管理
- 効果:カルテ作成時間70%削減、顧客情報検索が瞬時に
技法5:【速める】- 同じ方法でのスピードアップ
スピードアップの3つのアプローチ
アプローチ1:技術向上
練習や訓練によって作業スピードを向上させます。
例:調理スピードの向上
- 包丁技術の向上で野菜カット時間を30%短縮
- 段取りの最適化で仕込み時間を20%短縮
アプローチ2:道具の改善
より効率的な道具を導入します。
例:調理器具のアップグレード
- 業務用フードプロセッサー導入で下ごしらえ時間50%短縮
- 高性能オーブン導入で調理時間30%短縮
アプローチ3:動線の最適化
作業動線を見直して無駄な動きを削減します。
例:厨房レイアウトの改善
- 調理器具の配置見直しで移動距離30%削減
- 調味料の配置最適化で調理時間15%短縮
実践事例
事例:カフェのドリンク作成
- 改善前:1杯あたり平均3分
- 改善内容:
- エスプレッソマシンの操作技術向上
- 道具配置の最適化
- 作業手順の標準化
- 改善後:1杯あたり平均2分
- 効果:33%のスピードアップ、時間帯ピーク対応力向上
技法6:【集約する】- バラバラ作業をまとめる効果
集約化の原理
細切れで行っていた作業をまとめて実行することで、段取り時間を削減し、集中力を高めます。
主な集約化パターン
パターン1:時間集約
例:メールチェックの集約
- 改善前:1日10回、各5分チェック(合計50分)
- 改善後:1日3回、各10分チェック(合計30分)
- 効果:20分削減 + 集中力向上
パターン2:場所集約
例:仕入れの集約
- 改善前:毎日異なる業者へ仕入れ(移動時間多)
- 改善後:週2回、複数業者を同日に集約訪問
- 効果:移動時間60%削減
パターン3:作業集約
例:SNS投稿の集約
- 改善前:思いついた時に個別投稿
- 改善後:週1回、1週間分をまとめて作成・予約投稿
- 効果:作成時間50%削減、内容の一貫性向上
集約化成功のポイント
ポイント1:適切な集約単位
- 日次集約:メールチェック、SNS確認など
- 週次集約:仕入れ、事務処理など
- 月次集約:売上分析、計画見直しなど
ポイント2:集約タイミングの最適化
自分のエネルギーレベルが高い時間帯に集約作業を行います。
ポイント3:緊急時対応の準備
集約化しても、緊急時には対応できる体制を整えておきます。
6技法の組み合わせ活用法
段階的適用のススメ
1つの作業に複数の技法を段階的に適用します。
例:売上管理業務の改善
- なくす:不要な集計項目を廃止(30分削減)
- 変える:手書き→Excel化(1時間削減)
- 集約する:日次→週次集約(2時間削減)
- 任せる:基本集計をスタッフに移譲(3時間削減)
総削減時間:6.5時間/週
技法選択の判断フローチャート
作業分析
↓
なくせるか? → Yes → 廃止
↓ No
任せられるか? → Yes → スタッフ移譲
↓ No
委託できるか? → Yes → 外部委託
↓ No
より良い方法があるか? → Yes → 方法変更
↓ No
スピードアップできるか? → Yes → 技術・道具改善
↓ No
集約できるか? → Yes → まとめて実行
今週からの実践プラン
ステップ1:作業リストアップ(今日)
あなたが行っている全作業を書き出します
ステップ2:6技法での分析(明日)
各作業に対して6技法のどれが適用できるかを検討
ステップ3:優先順位付け(明後日)
効果の大きそうなものから優先順位をつける
ステップ4:1週間実験(来週)
選んだ改善策を1週間試行
ステップ5:効果測定と継続判断(再来週)
削減効果を測定し、継続・修正・中止を判断
まとめ:6技法で時間創出のプロになろう
この6つの技法をマスターすれば、あなたはどんな作業でも時間創出のアプローチを見つけられるようになります。
大切なのは「なくす」から始めることです。多くの人は「速める」や「集約する」から始めがちですが、それでは効果が限定的です。
まず「本当に必要な作業か?」を問い、不要なものは勇気を持って「なくす」。そして残った作業に対して、他の5技法を適用していく。
この順番を守ることで、あなたの時間創出効果は最大化されます。
今日から、この6技法を使って、あなたの24時間を理想的な配分に変えていきましょう。
次回は「不要な作業を完全排除する判断基準」について詳しく解説します。「なくす」技法をさらに深掘りし、どんな作業を廃止すべきかの具体的な判断基準をお伝えします。
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