「自分にしかできない」思い込みを打破する5つの質問法

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「自分にしかできない」思い込みを打破する5つの質問法

前回の蕎麦屋さんの事例で、多くの経営者が「思い込み」によって自分を縛っていることをお伝えしました。

「あの事例は分かったけど、うちの業種は違う」 「うちの仕事は本当に複雑で、他の人には無理」

そんな風に思っていませんか?

今日は、どんな業種・業態でも使える「思い込み打破の5つの質問法」をご紹介します。この質問に答えるだけで、あなたが抱え込んでいる仕事の90%以上が、実は他の人でもできることに気づくはずです。

目次

なぜ「自分にしかできない」思い込みが生まれるのか?

まず、この思い込みが生まれる心理的メカニズムを理解しましょう。

パターン1:技術者・職人出身の経営者

「長年の経験で身につけた技術は、簡単には教えられない」

パターン2:完璧主義者の経営者

「お客様に最高のサービスを提供するには、自分がやらないと心配」

パターン3:コントロール欲求の強い経営者

「すべてを把握していないと不安。人に任せるのが怖い」

パターン4:過去の失敗経験を持つ経営者

「前にスタッフに任せたら失敗した。だから自分でやるしかない」

どのパターンも、一見正当な理由に見えますが、実は経営者の成長を阻む「思い込み」なのです。

思い込み打破の5つの質問法

では、具体的にどのような質問をすれば、この思い込みを打破できるのでしょうか?

質問1:「本当に100%自分にしかできませんか?」

まず最初に、大前提を疑ってみましょう。

実例:居酒屋の仕込み作業

思い込み状態の回答 「味付けは長年の勘が必要だから、絶対に私にしかできない」

質問後の気づき 「確かに最終的な味見は私がした方がいいけど、野菜を切ったり、材料を計量したりは…誰でもできるかも」

この質問の効果

  • 「100%」という極端な思考を和らげる
  • 一部分でも他の人ができる部分があることに気づく
  • 完璧主義から現実的な視点への転換

質問2:「その作業を時系列で分解すると何ステップありますか?」

大きなまとまりで考えるから「自分にしかできない」と感じるのです。小さく分解してみましょう。

実例:美容室のカット技術

分解前の認識 「ヘアカットは芸術的センスが必要で、代替不可能」

分解後の認識

  1. お客様の要望ヒアリング(10分)
  2. 髪質・頭の形の確認(5分)
  3. ブロッキング(髪を区分けする)(5分)
  4. ベースカット(大まかな形作り)(15分)
  5. 細部の調整(10分)
  6. 毛量調整(5分)
  7. スタイリング(5分)
  8. 仕上がり確認(5分)

気づき 「実際に高度な技術が必要なのは4番と5番だけ。他の工程は、適切な練習をすれば他のスタイリストでもできるかも」

質問3:「10年前の自分にもできなかったことですか?」

現在のあなたの技術レベルは、一朝一夕で身についたものではありません。10年前、5年前の自分を思い出してみてください。

実例:レストランの調理

思い込み状態 「この料理は20年の経験があってこそ作れる」

過去の自分を振り返って 「そういえば、10年前の私でもある程度は作れていた。最初は先輩に教わりながらだったけど…」

気づき 「ということは、適切な指導と練習があれば、他の人でも習得可能かもしれない」

質問4:「競合他店では誰がその作業をしていますか?」

同業他社の事例を冷静に観察してみましょう。

実例:カフェの接客サービス

思い込み状態 「お客様との会話や細やかな気配りは、私の人柄があってこそ」

他店を観察して 「そういえば、あの人気カフェは若いアルバイトスタッフが中心で接客している。でもお客様は満足している様子…」

気づき 「接客の基本パターンやマニュアルがしっかりしていれば、誰でもある程度のレベルの接客はできるのかも」

質問5:「もし自分が1ヶ月入院したら、その仕事はどうなりますか?」

究極の質問です。物理的に不可能な状況を想定することで、代替案を真剣に考えざるを得なくなります。

実例:個人経営の整体院

思い込み状態 「私の手技は特別で、代わりは絶対にいない」

1ヶ月入院を想定して 「お客様をすべて断るか…いや、それは経営的に不可能。ということは、他の整体師に頼むか、スタッフに基本的な技術を教えるか…」

気づき 「緊急時には代替案を考えるのに、普段は考えていない。今から少しずつでも他の人ができるような仕組みを作っておくべきかも」

5つの質問の実践ワーク

では、実際にこの5つの質問を使って、あなたの思い込みを打破してみましょう。

Step1:思い込み作業の洗い出し

まず、「自分にしかできない」と思っている作業を3つ書き出してください。

例:

  1. 月末の売上集計と分析
  2. 新メニューの開発
  3. 重要取引先との商談

Step2:質問1を適用

各作業に対して「本当に100%自分にしかできませんか?」と問いかけてみてください。

例:月末の売上集計と分析

  • データ入力部分:誰でもできる
  • 基本的な集計:エクセルができれば誰でも
  • 高度な分析:確かに経験が必要かも
  • 改善策の立案:これは経営者の仕事

Step3:質問2で作業分解

時系列で細かく分解してみてください。

例:月末の売上集計と分析(分解版)

  1. レジデータの出力(5分)
  2. エクセルへのデータ入力(30分)
  3. 基本集計の実行(10分)
  4. グラフ作成(15分)
  5. 前月・前年比較(10分)
  6. トレンド分析(20分)
  7. 改善課題の洗い出し(30分)
  8. 改善策の立案(30分)

気づき 「1-5番は、フォーマットを作ればスタッフでもできる。私が本当にやるべきは6-8番だけ」

Step4:質問3〜5で検証

残りの質問も順番に適用して、思い込みをさらに崩していきます。

思い込み打破後の具体的アクション

質問によって思い込みが打破できたら、次は具体的な行動に移しましょう。

アクション1:移譲可能作業の優先順位づけ

  • A:すぐに移譲可能(難易度低、リスク小)
  • B:練習後に移譲可能(難易度中、リスク中)
  • C:当面は自分が継続(難易度高、リスク大)

アクション2:移譲プランの作成

A評価の作業から開始

  • 移譲相手の選定
  • 教育スケジュールの作成
  • チェックポイントの設定
  • 完全移譲の目標日設定

アクション3:段階的移譲の実施

3段階で進める

  1. 見学段階:隣で見ていてもらう
  2. 補助段階:一緒にやってもらう
  3. 独立段階:一人でやってもらい、結果をチェック

実際の成功事例:思い込み打破の効果

事例1:イタリアンレストラン T店

思い込み:「パスタの茹で加減は私にしかわからない」

質問適用後の気づき

  • タイマー管理すれば誰でも基本は可能
  • 最終確認だけ自分がやればよい

結果

  • 厨房作業の40%をスタッフに移譲
  • 浮いた2時間でマーケティングに専念
  • 3ヶ月で売上15%アップ

事例2:美容室 S salon

思い込み:「お客様カウンセリングは経験がないと無理」

質問適用後の気づき

  • 基本的な聞き取りはマニュアル化可能
  • 複雑な要望のみ自分が対応すればよい

結果

  • 1日の接客可能客数が1.5倍に
  • スタッフのスキルアップとモチベーション向上
  • 月商30%増を達成

事例3:税理士事務所 M office

思い込み:「税務相談は資格と経験が必要で移譲不可能」

質問適用後の気づき

  • 基本的な質問対応はFAQ化可能
  • 書類作成の80%は定型パターン

結果

  • 単純作業をスタッフに移譲
  • 高度な税務業務と新規開拓に集中
  • 顧客数を2倍に拡大

思い込み打破を継続するための習慣

一度思い込みを打破しても、時間が経つと元に戻ってしまうことがあります。継続するための習慣を身につけましょう。

習慣1:月1回の思い込みチェック

月末に「今月、私にしかできないと思ってやった作業」をリストアップし、5つの質問を適用する

習慣2:他店舗・他業種の観察

  • 同業他社の運営方法を観察
  • 異業種の効率化事例を研究
  • 「うちでも応用できないか?」と常に考える

習慣3:スタッフからの提案を積極的に聞く

  • 「この作業、もっと効率的にできませんか?」
  • 「私がやっている◯◯、やってみたいですか?」
  • 現場スタッフの視点を活用する

習慣4:小さな実験を継続する

  • 週に1つ、5分でできる作業を移譲してみる
  • 失敗を恐れず、70点でOKとする心構え
  • 改善点を見つけたら即座に修正

まとめ:思い込みを手放して経営者として成長しよう

「自分にしかできない」という思い込みは、一見、責任感や品質へのこだわりの表れのように見えます。しかし実際には、あなたの成長を阻む最大の障害なのです。

5つの質問法を使って思い込みを打破することで、あなたは以下を手に入れることができます:

時間の余裕:本来の経営者業務に集中できる
スタッフの成長:責任を与えることで能力が向上
事業の安定性:属人化リスクの回避
新しい挑戦:空いた時間で事業拡大が可能
プライベートの充実:家族や趣味の時間を確保

今日から、5つの質問を武器に、あなたの思い込みと向き合ってみてください。

きっと、これまで見えなかった新しい可能性が見えてくるはずです。


次回の記事では、「大分類を小分類に分ける具体的手順」について、業種別の実例とともに詳しく解説します。思い込みを打破した後の、実際の作業分解テクニックをお楽しみに!

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この記事を書いた人

コピーライター/店舗利益最大化コンサルタント
中小企業診断士(経済産業省登録番号 402345)
絵本作家(構想・シナリオ担当)

・有限会社繁盛店研究所 取締役
・株式会社繁盛店研究出版 代表取締役
・株式会社日本中央投資会 代表取締役
・繁盛店グループ総代表

1975年 静岡県清水市生まれ(現在:静岡市清水区)
自営業の家に生まれ、親戚一同も会社経営をしていることから、小さい頃より受付台にたち、商売を学ぶ。

大学入学と同時にお笑い芸人としての活動を経験。活動中は、九州松早グループの運営するファミリーマートのCMに出演。急性膵炎による父の急死により大学卒業後、清水市役所に奉職。

市役所在職中に中小企業診断士の取得を始める。昼間は市役所で働き、夜は診断士の受験勉強。そして、週末は現場経験を積むため無給でイタリアンレストランでの現場修行を経験。6年間の試験勉強を経て、中小企業診断士資格を取得。

取得を契機に7年目で市役所退職。退職後、有限会社繁盛店研究所(旧:有限会社マーケット・クリエーション)を設立。

お笑い芸人として活動していた経験から、小売店や飲食店、美容室、整体院の客数増加や店内販売活動に、お笑い芸人の思考法や行動スタイル、漫才の手法などを取り入れることで、クライアントの業績が着実に向上していく。

こうした実績を積み上がるに従い、信奉者が増える。独自の繁盛店メソッド「笑人の繁盛術」の考え方で、コンサルティングを行う。

発行するメールマガジンは、専門用語を使わない分かりやすい内容から、メルマガ読者からの業績アップ報告が多く、読者総数は1万人を超える。

会員制コンサルティングサポート「増益繁盛クラブ」を運営。人気テレビ番組ガイアの夜明けにも取り上げられるなど注目を浴びる。これまで北は北海道から南は沖縄、そして、アメリカからも参加する方がいるなど、多くの方が実践を続けている。

コンサルタントが購読する「企業診断」(同友館)からもコンサルタントに向けた連載を依頼されるなど、コンサルタントのコンサルタントとしても活躍中。

どんなに仕事が忙しくとも毎月1回の先祖のお墓参りを大事にしている。家族を愛するマーケッター。

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