現状維持装置を味方につける逆転発想法

「新しいことを始めようとするといつも邪魔をしてくる、心の中の反対の声」
「変化しようとすると必ず現れる『やめておいた方がいい』という気持ち」

これまでの記事で 現状維持装置 について詳しく説明してきましたが、多くの人がこの装置を「邪魔者」「敵」だと思っています。

でも、ちょっと待ってください。

実は、現状維持装置は あなたの最強の味方 になる可能性を秘めているのです。今日は、その逆転発想法をお伝えします。

この記事では、現状維持装置の力を利用して、自然と良い方向に進んでいく方法を分かりやすく解説します。

目次

現状維持装置を「敵」だと思っていませんか?

よくある間違った考え方

多くの人の思い込み:

  • 現状維持装置 = 悪いもの
  • 変化を邪魔する敵
  • なくしてしまいたいもの
  • 無視して強引に進むべきもの

この考え方の問題点:
現状維持装置と戦おうとすると、ものすごいエネルギーが必要になり、結局疲れ果てて元に戻ってしまう

実は現状維持装置は「優秀な部下」

現状維持装置を別の角度から見てみると:

優秀な部下としての特徴:

  • とても真面目で責任感が強い
  • あなたのことを本当に心配している
  • 24時間365日、休まずに働いている
  • 危険を察知する能力がとても高い
  • 一度決まったルールは確実に守る

つまり:
使い方次第で、これほど頼りになる味方はいないのです。

現状維持装置の「得意技」を知ろう

得意技1:継続の力

何が得意か:
一度習慣になったことを、自動的に続けさせる

悪い例:

  • 毎日だらだらテレビを見る習慣
  • ついついスマホを見てしまう習慣
  • 「忙しい」が口癖になる習慣

良い例(活用法):

  • 毎朝の学習時間を習慣化
  • お客さんへの感謝の言葉を習慣化
  • 店舗の清掃を習慣化

得意技2:パターン認識

何が得意か:
「いつものパターン」を瞬時に認識して、同じ行動を取らせる

悪い例:

  • いつも同じ失敗を繰り返す
  • いつも同じタイプの問題が起こる
  • いつも同じような言い訳をする

良い例(活用法):

  • 成功パターンを認識して自動的に再現
  • 良い接客パターンを無意識に実行
  • 効率的な作業パターンを自然と選択

得意技3:危険察知

何が得意か:
リスクや危険を事前に察知して、警告を発する

悪い例:

  • 新しいチャレンジを全て「危険」だと判断
  • 成長の機会も「リスク」として警告
  • 安全すぎる選択ばかりを推奨

良い例(活用法):

  • 本当に危険なことから守ってもらう
  • 判断ミスを事前に防いでもらう
  • 無謀な行動にブレーキをかけてもらう

得意技4:エネルギー節約

何が得意か:
無駄なエネルギーを使わないよう、効率的な方法を選ぶ

悪い例:

  • 楽な方に流されて成長しない
  • 努力を避けて現状にとどまる
  • 新しいことを覚えるのを嫌がる

良い例(活用法):

  • 効率的な作業方法を自動選択
  • 無駄な悩みにエネルギーを使わない
  • 重要なことに集中力を集約

現状維持装置を味方にする5つの逆転発想法

逆転発想法1:「新しい習慣」を「いつものこと」にする

基本的な考え方:
現状維持装置は「いつものこと」を続けさせるのが得意。だったら、良い習慣を「いつものこと」にしてしまえばいい。

具体的な方法:

ステップ1:小さな良い習慣から始める

  • 朝、お店の扉を開けるときに「今日もお客さんを喜ばせるぞ」と言う
  • お客さんが帰るときに必ず「ありがとうございました」と笑顔で言う
  • 夜、お店を閉めるときに「今日も良い一日だった」と感謝する

ステップ2:毎日同じタイミングで行う
現状維持装置は「いつものタイミング」が大好きなので、必ず同じ時間、同じ場面で行う

ステップ3:21日間続ける
21日続けると、現状維持装置が「これはいつものことだ」と認識して、自動的に続けてくれるようになる

飲食店での例:

  • 毎朝9時:「今日はどんな美味しい料理を作ろうかな」と考える習慣
  • お客さんが来店:「いらっしゃいませ!今日もよろしくお願いします」と心を込めて言う習慣
  • 毎晩10時:今日のお客さんの笑顔を思い出す習慣

美容室での例:

  • 毎朝8時:「今日はどんな風にお客さんをキレイにしようかな」と考える習慣
  • 施術開始時:「今日も素敵にさせていただきますね」と言う習慣
  • 毎晩9時:今日のお客さんの喜んだ顔を思い出す習慣

逆転発想法2:「変化」を「安全なパターン」にする

基本的な考え方:
現状維持装置は変化を嫌うが、「安全な変化のパターン」を作ってしまえば、変化すること自体が「いつものこと」になる

具体的な方法:

「安全な実験」のパターンを作る:

  1. 毎月第1週:新しいアイデアを考える
  2. 第2週:小さくテストしてみる
  3. 第3週:結果を確認して改善する
  4. 第4週:良かったものは続け、だめだったものはやめる

このパターンを3ヶ月続けると:
現状維持装置が「毎月新しいことに挑戦するのがいつものパターン」だと認識して、変化を邪魔しなくなる

例(飲食店):

  • 毎月新しいメニューを1品試す
  • 毎月店内の配置を少し変える
  • 毎月新しい接客方法を試す

例(美容室):

  • 毎月新しい技術を1つ練習する
  • 毎月店内の雰囲気を少し変える
  • 毎月新しいサービスを考える

逆転発想法3:現状維持装置を「品質管理部長」に任命する

基本的な考え方:
現状維持装置の「危険察知能力」を、品質向上のために活用する

具体的な活用法:

お客さん満足度の品質管理:

  • 「このサービスで本当にお客さんは喜ぶかな?」
  • 「この料理の味は前回と同じレベルを保てているかな?」
  • 「この接客で不快な思いをさせていないかな?」

経営判断の品質管理:

  • 「この値上げは本当にお客さんのためになるかな?」
  • 「この投資は本当に必要かな?」
  • 「この判断で後悔しないかな?」

現状維持装置との対話例:
「現状維持装置さん、品質管理部長として、この新メニューをチェックしてもらえますか?何か気になることはありますか?」

逆転発想法4:「成功パターン」を現状維持装置に記憶させる

基本的な考え方:
現状維持装置は一度「成功パターン」だと認識すると、自動的にそのパターンを再現してくれる

パターン記憶の方法:

ステップ1:成功体験を詳しく記録する

  • いつ、どこで、何をしたのか
  • どんな気持ちで行動したのか
  • 結果はどうだったのか
  • なぜうまくいったと思うか

ステップ2:成功パターンを繰り返し思い出す
同じような場面になったときに、「前回はこうやってうまくいった」と思い出す

ステップ3:意識的に同じパターンを再現する
成功したときと同じ行動、同じ心構えで取り組む

例(お客さん対応での成功パターン):

  1. 笑顔で迎える
  2. 相手の話をよく聞く
  3. 的確なアドバイスをする
  4. 感謝の気持ちを伝える
    → このパターンで満足度が高かった場合、現状維持装置が「このパターンを続けよう」と働いてくれる

逆転発想法5:現状維持装置を「応援団長」にする

基本的な考え方:
現状維持装置の「あなたを守りたい」という気持ちを、「あなたを成功させたい」という方向に向ける

応援団長化の方法:

感謝を伝える:
「現状維持装置さん、いつも私を守ってくれてありがとう」

共通の目標を設定する:
「一緒にお店を成功させよう」「一緒にお客さんを喜ばせよう」

協力をお願いする:
「今度の新しい挑戦、一緒に頑張ってもらえる?」

成功を共有する:
「うまくいったのは、現状維持装置さんが支えてくれたおかげです」

実践事例:現状維持装置と仲良くなった経営者たち

飲食店の事例:「変化嫌い」が「改善好き」に

Kさん(ラーメン店)の場合:

以前の状況:
現状維持装置が強く、新しいことを始めようとするといつも「やめておいた方がいい」という気持ちになって挫折していた

逆転発想法の実践:

1. 良い習慣の定着(逆転発想法1)

  • 毎朝「今日も美味しいラーメンを作るぞ」と声に出す習慣
  • お客さんに「ありがとうございます」と必ず言う習慣
  • 毎日スープの味を確認する習慣

2. 安全な変化パターンの確立(逆転発想法2)

  • 毎月第2週に限定メニューを1つ試す
  • 毎月第4週に結果を検証する
  • うまくいったものは継続、だめなものは改善

3. 品質管理部長への任命(逆転発想法3)
「現状維持装置さん、このスープの味はお客さんに喜んでもらえるレベルですか?」と毎日確認

結果(6ヶ月後):

  • 月1回の新メニュー試行が自然な習慣になった
  • 現状維持装置が「品質向上」の味方になった
  • 売上20%向上、お客さんの満足度も大幅アップ

美容室の事例:「慎重すぎる」が「丁寧な成長」に

Lさん(美容室)の場合:

以前の状況:
現状維持装置が心配性すぎて、新しい技術や道具の導入をいつも先延ばししてしまっていた

逆転発想法の実践:

1. 学習習慣の定着(逆転発想法1)

  • 毎朝15分、新しい技術の動画を見る習慣
  • お客さん一人一人に「今日も素敵にさせていただきますね」と言う習慣
  • 毎晩、今日の技術で良かった点を振り返る習慣

2. 成功パターンの記憶(逆転発想法4)
お客さんに特に喜ばれたときの技術や接客方法を詳しく記録し、同じパターンを意識的に再現

3. 応援団長化(逆転発想法5)
「現状維持装置さん、一緒にお客さんをもっと素敵にしていこうね」と毎日声をかける

結果(1年後):

  • 現状維持装置が「丁寧な成長」をサポートしてくれるように
  • 新技術の習得速度が3倍に向上
  • 客単価30%アップ、リピート率も大幅向上

現状維持装置との理想的な関係

理想的な関係性

現状維持装置を:

  • 敵ではなく、パートナーとして扱う
  • 無視するのではなく、対話する
  • 邪魔者ではなく、協力者として活用する
  • 障害ではなく、品質管理者として尊重する

日常的な対話例

朝の挨拶:
「おはよう、現状維持装置さん。今日も一緒に頑張ろうね」

新しいことを始めるとき:
「現状維持装置さん、心配してくれてありがとう。でも今回は準備もしっかりしたから、一緒にやってみない?」

うまくいったとき:
「現状維持装置さんが支えてくれたおかげで成功したよ。ありがとう」

失敗したとき:
「現状維持装置さんが心配していた通りになっちゃったね。次はもっと準備しよう」

まとめ:現状維持装置は最高のパートナー

現状維持装置は、使い方次第で あなたの最高のパートナー になります。

重要なポイント:

  1. 敵視しない – 現状維持装置を敵だと思わず、味方だと考える
  2. 特技を活用する – 継続力、パターン認識、危険察知などの能力を良い方向に使う
  3. 対話する – 無視するのではなく、積極的にコミュニケーションを取る
  4. 感謝する – いつも守ってくれていることに感謝の気持ちを持つ
  5. 協力をお願いする – 一緒に目標を達成するパートナーとして扱う

最も大切なこと:
現状維持装置は、あなたの中にいる もう一人の優秀な自分 です。この装置と仲良くなることで、無理をしなくても自然と良い方向に進んでいけるようになります。

今日から、現状維持装置を「邪魔者」ではなく「最高のパートナー」として接してみてください。きっと、今までとは全く違う体験ができるはずです。


今日のアクション:
今すぐ心の中で現状維持装置に話しかけてみてください。「現状維持装置さん、いつも私を守ってくれてありがとう。これからは一緒に良いお店を作っていこうね」と言って、どんな感じがするか体験してみてください。そして明日から、何か新しいことを始めるときは、現状維持装置と相談しながら進めてみてください。​​​​​​​​​​​​​​​​

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この記事を書いた人

コピーライター/店舗利益最大化コンサルタント
中小企業診断士(経済産業省登録番号 402345)
絵本作家(構想・シナリオ担当)

・有限会社繁盛店研究所 取締役
・株式会社繁盛店研究出版 代表取締役
・株式会社日本中央投資会 代表取締役
・繁盛店グループ総代表

1975年 静岡県清水市生まれ(現在:静岡市清水区)
自営業の家に生まれ、親戚一同も会社経営をしていることから、小さい頃より受付台にたち、商売を学ぶ。

大学入学と同時にお笑い芸人としての活動を経験。活動中は、九州松早グループの運営するファミリーマートのCMに出演。急性膵炎による父の急死により大学卒業後、清水市役所に奉職。

市役所在職中に中小企業診断士の取得を始める。昼間は市役所で働き、夜は診断士の受験勉強。そして、週末は現場経験を積むため無給でイタリアンレストランでの現場修行を経験。6年間の試験勉強を経て、中小企業診断士資格を取得。

取得を契機に7年目で市役所退職。退職後、有限会社繁盛店研究所(旧:有限会社マーケット・クリエーション)を設立。

お笑い芸人として活動していた経験から、小売店や飲食店、美容室、整体院の客数増加や店内販売活動に、お笑い芸人の思考法や行動スタイル、漫才の手法などを取り入れることで、クライアントの業績が着実に向上していく。

こうした実績を積み上がるに従い、信奉者が増える。独自の繁盛店メソッド「笑人の繁盛術」の考え方で、コンサルティングを行う。

発行するメールマガジンは、専門用語を使わない分かりやすい内容から、メルマガ読者からの業績アップ報告が多く、読者総数は1万人を超える。

会員制コンサルティングサポート「増益繁盛クラブ」を運営。人気テレビ番組ガイアの夜明けにも取り上げられるなど注目を浴びる。これまで北は北海道から南は沖縄、そして、アメリカからも参加する方がいるなど、多くの方が実践を続けている。

コンサルタントが購読する「企業診断」(同友館)からもコンサルタントに向けた連載を依頼されるなど、コンサルタントのコンサルタントとしても活躍中。

どんなに仕事が忙しくとも毎月1回の先祖のお墓参りを大事にしている。家族を愛するマーケッター。

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