値上げできない本当の理由は現状維持装置にあった

「原材料費も上がっているし、光熱費も上がっている。値上げしないと利益が出ない…でも、なかなか踏み切れない」

こんな悩みを抱えていませんか?

実は、値上げできない理由は「お客さんが離れる心配」だけではありません。あなたの心の中にある 「現状維持装置」 が、値上げを邪魔している可能性が高いのです。

この記事では、なぜ値上げが怖く感じるのか、そしてその心の仕組みを乗り越えて適正価格を実現する方法を分かりやすく解説します。

目次

現状維持装置って何?

あなたを守ろうとする心の番人

現状維持装置とは、人間の心に備わった 「変化を嫌う仕組み」 です。

こんな時に働きます:

  • 新しいことを始めようとした時
  • 今までのやり方を変えようとした時
  • リスクがありそうなことをしようとした時

なぜ邪魔をするのか:
この装置は あなたを危険から守ろうとして 働いています。「今までのやり方で生きてこれたんだから、わざわざリスクを冒す必要はない」と考えているんです。

まるで過保護な親が「危ないから外に出ちゃダメ」と言っているようなものです。

値上げ時に現状維持装置が働く理由

値上げは大きな変化だから

値上げは、お店にとって大きな変化です。現状維持装置は、この変化を「危険」と判断して、あなたを止めようとします。

具体的にはこんな思考を作り出します:

  • 「お客さんが怒って来なくなるかも」
  • 「競合店に客を取られるかも」
  • 「売上が下がってしまうかも」
  • 「今のままでも何とかやっていけるし…」

現状維持装置が作る5つの値上げ阻害思考

1. 完璧主義思考:「完璧なタイミングまで待とう」

装置の声:

  • 「もう少し材料費が上がってから」
  • 「もっと良いサービスができるようになってから」
  • 「お客さんに完璧に説明できるようになってから」

現実:
完璧なタイミングなんて存在しません。待っている間に、どんどん利益が減っていきます。

2. 破滅思考:「最悪の結果ばかり想像してしまう」

装置の声:

  • 「全部のお客さんが来なくなる」
  • 「悪い口コミが広まってお店が潰れる」
  • 「近所の人に文句を言われる」

現実:
実際に値上げをした多くのお店で、お客さんの90%以上は理解してくれています。

3. 罪悪感思考:「お客さんに申し訳ない」

装置の声:

  • 「常連のお客さんに負担をかけてしまう」
  • 「お金がない人が来られなくなる」
  • 「値上げするなんて欲張りだと思われる」

現実:
適正価格でないと、良いサービスを続けることができません。

4. 比較思考:「他店より高くなってしまう」

装置の声:

  • 「あの店はもっと安いのに」
  • 「お客さんは安い店に行ってしまう」
  • 「高いお店だと思われたくない」

現実:
価格だけで選ぶお客さんより、価値を理解してくれるお客さんの方が長く続きます。

5. 現状満足思考:「今でも何とかやっていける」

装置の声:

  • 「売上は下がっているけど、まだ大丈夫」
  • 「節約すれば何とかなる」
  • 「忙しくて値上げを考える時間がない」

現実:
気がついた時には、もう手遅れになっている可能性があります。

現状維持装置を乗り越える「値上げ成功法」

ステップ1:装置の声を認識する

「あ、現状維持装置が働いているな」と気づく

値上げに対する不安や恐怖を感じた時、まずは「これは現状維持装置の声だ」と認識してください。

チェックリスト:
□ 値上げの必要性は分かっているのに踏み切れない
□ 最悪の結果ばかり想像してしまう
□ 「もう少し待ってから」と先延ばししている
□ お客さんに申し訳ない気持ちが強い
□ 他店と比較して不安になる

3つ以上当てはまったら、現状維持装置が働いています

ステップ2:装置との対話

装置に感謝して、安心させる

現状維持装置は敵ではありません。あなたを守ろうとしてくれているのです。

基本の対話:
「現状維持装置さん、私を守ろうとしてくれてありがとう。でも今回の値上げは、お店を長く続けるために必要なことなんだ。一緒に乗り越えてみない?」

ステップ3:装置の心配に具体的に答える

心配1:「お客さんが離れてしまう」

装置への回答:
「確かにお客さんが離れる心配はあるね。でも値上げをした他のお店を調べてみたら、実際に離れるのは10%以下がほとんどだった。90%以上のお客さんは理解してくれるし、値上げ分は新しいお客さんでカバーできる可能性が高いよ」

具体的な対策:

  • 値上げの理由を丁寧に説明する
  • 値上げと同時にサービス向上も行う
  • 段階的な値上げで急激な変化を避ける

心配2:「売上が下がってしまう」

装置への回答:
「一時的に売上が下がる可能性はあるね。でも利益率が上がるから、実は同じ売上でも手元に残るお金は増えるんだ。それに、値上げしないでこのまま続けていたら、材料費や光熱費の上昇で確実に利益は減り続けるよ」

具体的な計算例:

現在:客単価1,000円 × 100人 = 売上100,000円(利益率20% = 20,000円)
値上げ後:客単価1,200円 × 90人 = 売上108,000円(利益率30% = 32,400円)

心配3:「競合店に負けてしまう」

装置への回答:
「価格だけで競争していたら、いつか限界が来るよ。値上げをきっかけに、他店にはない価値を作り出そう。そうすれば、価格より価値で選んでもらえるお店になれるんだ」

業界別値上げ成功事例

飲食店の値上げ成功例

Aさん(定食屋)の場合:

状況: 材料費上昇で利益率が10%まで低下

現状維持装置の声:
「常連のおじいちゃん、おばあちゃんに申し訳ない」
「近所の人に文句を言われるかも」

対策:

  1. 常連客に事前に丁寧に説明
  2. 値上げと同時におかずの品数を1品増加
  3. 段階的に50円ずつ値上げ

結果:

  • お客さん離れは5%のみ
  • 利益率20%に回復
  • おかず増量でお客さん満足度向上

美容室の値上げ成功例

Bさん(美容室)の場合:

状況: 技術向上したが価格は開業時のまま

現状維持装置の声:
「お客さんに高いと思われたくない」
「他店より高くなってしまう」

対策:

  1. 新しい技術・サービスメニューを追加
  2. 既存メニューは段階的値上げ
  3. 価値を実感してもらうためのカウンセリング強化

結果:

  • お客さん離れは8%のみ
  • 客単価30%向上
  • 予約が取りにくい人気店に

値上げを成功させる具体的ステップ

ステップ1:現状分析(1週間)

やること:

  • 現在の原価率を正確に計算
  • 競合店の価格調査
  • 自店の強み・差別化ポイントの整理
  • お客さんの年代・属性の分析

ステップ2:値上げ計画の作成(1週間)

決めること:

  • 値上げ幅(一気に上げるか、段階的か)
  • 値上げするメニュー・サービス
  • 値上げの理由と説明方法
  • 同時に行うサービス向上策

ステップ3:事前告知(2-4週間前)

やること:

  • 店内掲示で値上げ予告
  • 常連客への個別説明
  • SNSでの丁寧な説明投稿
  • 値上げ理由の明確な伝達

ステップ4:値上げ実行

当日の注意点:

  • スタッフ全員で統一した説明
  • お客さんの反応を丁寧に聞く
  • 不満があっても誠実に対応
  • 感謝の気持ちを忘れない

ステップ5:フォローアップ(1ヶ月間)

やること:

  • 客数・売上の変化を記録
  • お客さんの反応・意見を収集
  • 必要に応じて微調整
  • 新しいお客さん獲得の取り組み

現状維持装置との上手な付き合い方

装置の声が聞こえたら

1. 一旦立ち止まる
「あ、現状維持装置が心配してくれているな」と認識

2. 感謝を伝える
「いつも私を守ってくれてありがとう」

3. 具体的に安心させる
「今回はこういう準備をしているから大丈夫だよ」

4. 一緒に進むことを提案
「一緒に乗り越えてみない?」

装置と仲良くなるコツ

小さなステップから始める
いきなり大幅値上げではなく、小さな値上げから始めて装置を慣らしていく

成功体験を積む
小さな値上げで「大丈夫だった」という体験を装置に教えてあげる

定期的な対話
装置の声を無視するのではなく、定期的に対話して安心させる

まとめ:値上げは成長への第一歩

値上げができない理由は、現状維持装置の働きによるものが大きいのです。この装置は あなたの敵ではなく、味方 です。

大切なのは:

  1. 装置の存在を認識する – 「あ、働いているな」と気づく
  2. 装置に感謝して対話する – 敵視するのではなく、感謝して安心させる
  3. 具体的な対策で安心させる – 漠然とした不安には具体的な準備で答える
  4. 小さなステップから始める – いきなり大きな変化ではなく、段階的に

適正価格での営業は、あなたのお店が長く続くために必要なことです。現状維持装置と上手に付き合いながら、勇気を持って値上げに踏み切ってください。

次のステップ

値上げへの心の準備ができたら、次は具体的な値上げ戦略について学びましょう。

次の記事「お客さんに喜ばれながら値上げする方法」では、値上げをチャンスに変える具体的なテクニックについて分かりやすく解説します。


今日のアクション:
今すぐ紙とペンを用意して、「値上げに対して感じている不安」を3つ書き出してください。そして、それぞれに対して「でも実際は…」と現実的な反論を書いてみてください。これが現状維持装置との対話の第一歩です。不安の正体が見えれば、解決策も見えてきます。​​​​​​​​​​​​​​​​

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この記事を書いた人

コピーライター/店舗利益最大化コンサルタント
中小企業診断士(経済産業省登録番号 402345)
絵本作家(構想・シナリオ担当)

・有限会社繁盛店研究所 取締役
・株式会社繁盛店研究出版 代表取締役
・株式会社日本中央投資会 代表取締役
・繁盛店グループ総代表

1975年 静岡県清水市生まれ(現在:静岡市清水区)
自営業の家に生まれ、親戚一同も会社経営をしていることから、小さい頃より受付台にたち、商売を学ぶ。

大学入学と同時にお笑い芸人としての活動を経験。活動中は、九州松早グループの運営するファミリーマートのCMに出演。急性膵炎による父の急死により大学卒業後、清水市役所に奉職。

市役所在職中に中小企業診断士の取得を始める。昼間は市役所で働き、夜は診断士の受験勉強。そして、週末は現場経験を積むため無給でイタリアンレストランでの現場修行を経験。6年間の試験勉強を経て、中小企業診断士資格を取得。

取得を契機に7年目で市役所退職。退職後、有限会社繁盛店研究所(旧:有限会社マーケット・クリエーション)を設立。

お笑い芸人として活動していた経験から、小売店や飲食店、美容室、整体院の客数増加や店内販売活動に、お笑い芸人の思考法や行動スタイル、漫才の手法などを取り入れることで、クライアントの業績が着実に向上していく。

こうした実績を積み上がるに従い、信奉者が増える。独自の繁盛店メソッド「笑人の繁盛術」の考え方で、コンサルティングを行う。

発行するメールマガジンは、専門用語を使わない分かりやすい内容から、メルマガ読者からの業績アップ報告が多く、読者総数は1万人を超える。

会員制コンサルティングサポート「増益繁盛クラブ」を運営。人気テレビ番組ガイアの夜明けにも取り上げられるなど注目を浴びる。これまで北は北海道から南は沖縄、そして、アメリカからも参加する方がいるなど、多くの方が実践を続けている。

コンサルタントが購読する「企業診断」(同友館)からもコンサルタントに向けた連載を依頼されるなど、コンサルタントのコンサルタントとしても活躍中。

どんなに仕事が忙しくとも毎月1回の先祖のお墓参りを大事にしている。家族を愛するマーケッター。

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